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カテゴリ:パリ関連・その他( 9 )
村上春樹『色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年』を読んで
久しぶりに村上春樹を読みました。
彼の新作が出ることは一つの大きなニュースであり、
それを読むことはどんな海外の風景よりも私を興奮させてくれます。
そのため、パリの記事とは関係ありませんが
ここで書かせていただきます。

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彼の作品を旅行でたとえるなら、
異国や見知らぬ遠くの土地へ飛行機で行くのではなく
近所に不意に出現した不可解な路地を散策する感覚。
どんな枠にもとらわれない奇抜な会話とストーリーなのに
自分の心の中にある不安と共鳴する音を持っています。

タイトルについて

『色彩と持たない多崎つくると、彼の巡礼の年』
最初は不可思議で長いタイトルだと感じていましたが、、
読んだ後には、この物語の重要な要素が全て詰め込まれた秀逸な題字だと思いました。
たしかに主人公は多崎つくるで、彼はたしかに色彩を持たないと自分自身を考えており、物語の中心はたしかにある意味で彼の巡礼の年になりました。
タイトルにはほぼすべてが凝縮されています。
それでいて読まなければ全く内容が分からないのが
彼の作品のすごいところでもあります。

主人公多崎つくるについて

主人公、多崎つくるはどこまでも村上春樹的な主人公。
36歳独身で、駅を設計するエンジニアの仕事についています。
都内に住んでいますが親からの資産があってお金には困らず、
女性にもそこそこもてますが体の内部に空虚を持っている。
人付き合いはいいけれど、いつも他人と距離をとっている。
家では洗濯をしアイロンをかけ、プールに泳ぎに行ったりする。
つまり、これぞ村上春樹という主人公です。
そのことが私を安心させ、すぐにその世界へ入って行けました。

物語のあらすじ(核心部分には触れていません)

物語は大学生時代の主人公が死を考えるところから始まります。
高校時代に仲の良かった5人グループの中に多崎つくるはいましたが、
ある時を境にそのグループから理由もなく追放されてしまいます。
それ以来、彼は仲間の誰とも会わずに東京で一人暮らしを続けます。
一時期は死を考えながらもかろうじて生き延び、卒業して社会人になります。
そして追放された理由も分からずに16年の歳月が流れます。
36歳になった彼はガールフレンドの助言を頼りに
追放された理由を求めてかつての仲間に会う旅に出かけます。

追放されなければならなかった理由を探ることが
この小説の一つの核でありミステリー的要素とも言えます。
しかしその理由が通常考えられるものではない世界に属するところが、
村上春樹の作品の質であり、彼にしか描けない多くの人に共感する
深い物語世界の秘密とも言えそうです。
そしてそこには普遍的で人生の示唆に満ちた思索が含まれています。
それこそが村上作品が世界中で読まれる理由だと思います。

あいまいで多義的で謎に満ちた会話

村上春樹と言えば、登場人物たちの会話にも特徴がありますね。
その会話は今回の作品でも健在です。
相手の謎を引き出すような問答や、曖昧で暗喩に満ちた説明、
ウィットの効いた比喩など、日本人の会話とは思えないものばかり。
しかも登場人物全員が同じような喋り方をするため、
主人公と話している時以外の場面ではわき役たちはどんな話し方をしているのか気になってしまうほど。
しかしそんな変わった会話が普通に行われていることこそが
村上春樹の世界の魅力でもあります。静かで強く恐ろしい。
その会話がなくなってしまったら、その作品の魅力も半減するでしょう。

『色彩を持たない多崎つくる・・・』の舞台設定

また舞台が日本だけでなくフィンランドも登場するところも
この物語に重層的でリアルな趣を与えています。
村上春樹にとって土地勘のある名古屋が主人公の故郷として
出てくるところにもリアリティがあります。

小説に登場する音楽について

そして今回もやはり音楽が重要なキーワードになってきます。
フランツ・リストの『巡礼の年』は「第1年」「第2年」「第3年」からなるピアノ独奏曲集。その中でも特に「第1年」に収録されている「ル・マル・デュ・ペイ」(Le Mal du Pays)はフランス語で「田園風景が呼び起こす哀しみ」という意味で、主人公が恋していた高校時代の友人がよく弾いていた曲です。この音楽がストーリーの中で大きな意味を持っています。小説のタイトルにある「巡礼の年」はおそらくこの曲名からとられています。

気になった点について

『色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年』を読んで
気になった点が大きく分けて3つありました。
一つ目は最後まで解決されない謎です。
それはグループと別れてからできた唯一の友人、灰田の存在です。
彼は主人公と話が合い、よくつくるの家に遊びに来ましたが、
どこまでも謎に満ちていて、彼が話した自分の父親の逸話や、その後休学して主人公の前から消えるなど、彼の存在や意味がほとんど謎のまま物語が閉じられています。
(そんな謎があることが人生だと言われればそれまでですが)
小説全体のモチーフとなる音楽レコードを主人公の家に置いて行った彼がその後どうなったか、具体的な形では描かれていません。
私の読みが甘いせいかもしれませんが、その点が心にひっかかっています。

もう一つは主人公のガールフレンドの存在です。
彼の巡礼の旅のきっかけやアドバイスをくれる重要な存在ではありますが、
今一つ主人公が彼女に恋をする決定的な理由が見当たりません。
彼女は旅行代理店に勤めており有能ではありますが年上の男性とも付き合っているように見受けられる場面もあり、
彼女が主人公の中に占める大きさに納得できる特質があまりなかったように思えました。
つくるの心を大きく動かした彼女との出会いやエピソードがもっとあればいいなと個人的に感じました。

最後の一つは後半の物語におけるストーリーのスピードです。
小説は最初から最後まで深く興味深い旅ではありましたが、
もう少し後半で大きな衝撃や何かがあればよいなと思いました。
簡単に言えば、後半で若干スピード感が弱まるような感触を受けました。
言いかえれば説明的で概略的な文章が微妙に増えたような感じがしました。
しかしそれは読者それぞれの感覚によるものだと思います。
それにもましてこんな世界を読者に与えてくれる彼の筆力に
ただただ驚き、すでに次回作を期待せずにはいられません。

リンゴの味そのものではなく、リンゴというものの本質を味わせてくれるような
彼にしか描けない独自の不思議であまりに深い世界。
今回も素晴らしい小説を出してくれた村上春樹にただ感謝します。
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by kou-mikami | 2013-04-20 14:37 | パリ関連・その他
フランス演劇『眠りのすべて』を観る
『眠りのすべて』というフランス演劇を観てきました。
東京日仏学院主催の公演です。

「睡眠障害」をテーマにした、すごく変わった演劇。
昔から夢とか睡眠にすごく興味を持っていたので、
眠りについての深い考察ができそうな気がして、ずっと楽しみにしていた公演。

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『眠りのすべて』パンフレット

今回の公演のもう一つの楽しみは出演者。
あの『ポン・ヌフの恋人』で主演したドニ・ラヴァンが出演しています。
現在は主に舞台で活躍している俳優です。
彼が演じる生の舞台を見ることができたのは貴重な体験でした。

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公演後のドニ・ラヴァン

『眠りのすべて』はあらゆる眠りをダンスとテクストで表現するというもので、
プロローグにはドニ・ラヴァンと振付家マリオン・レヴィによる
とてもコミカルな睡眠講座がありました。
(眠りには3つある:浅い眠り、深い眠り、そしてレム睡眠!
 夜は刺激物を避ける:コーヒー、紅茶、ビタミンC、女遊び・・・など)

その後、「眠り」という概念を象徴した女性の詩的な独白に始まり、
夢に入っていくまでのプロセスを複数のダンサーが独自に表現。
特にアリン・ブラズ・ダ・シルヴァの演技が美しかった。
他に動物に変身してしまうドニ・ラヴァンの演技も面白い。

どうやって夢に入り込み、そして眠っている間に何が起こるかを
深い考察の中で表現していくフランスらしい舞台でした。
照明も赤・緑・青の三原色を使ったもので、光療法の原理とのこと。
鏡を使った驚きの演出も、もう一人の自分と対峙する夜の世界にぴったり。
(鏡の中に映像が移され、床に寝ている役者が空に浮かぶように見えます)
演出のどれもが美しく象徴的で、眠りについて考えさせられる舞台でした。

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『眠りのすべて』の出演者(パンフレットより)

またフランス人の詩的で量の多いテクストは
沈黙の多い眠りをテーマにした演劇でも変わりません。
フランス演劇の役者たちは本当にみんなよくしゃべる・・・。
「あなた眠ってる?」「いいや!」「私も!」「私は眠ってる?」
皆が一斉にテクストを吐き出す場面はすでに理解不能でした。

この演劇を思いついたのは振付家のマリオン・レヴィ。
彼女自身も実生活の中で睡眠障害に悩まされており、
パリのシテ島にあるオテル・デュー病院睡眠センターの医師の話を聞いているうちに
眠りというテーマの芸術的な潜在性に気づいたそうです。

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マリオン・レヴィの制作ノート(パンフレットより)

公演後の役者と振付家、作家を交えたトークショーでは、
ナンテール大学のビエ教授を司会に、夢をテーマにいろんな話が聴けました。
夢の神モルフェウスという存在は初めて知りました。なんとなく気になります。
他に印象に残ったのは、脚本を担当したファブリス・メルキオの
「動きの音楽性と言葉の音楽性が合わさった時に新しいものが生まれる」
という言葉で、作家らしい意見だなと思いました。
ダンス(身体)だけではなく他から来るもの(言葉)が大事だということだと
思います。それにしてもフランス演劇のテクストは本当に魅力的。
ダンスと言葉の融合によるハイブリッドなスペクタクルでした。

公演後、舞台で使われた白い枕を持って帰ってよいそうなので
ありがたく持って帰りました。(ドニ・ラヴァンにサインしてもらいました)
これでいい夢が見られそうです。

『眠りのすべて』"En Somme!"
構想・振付:マリオン・レヴィ
テクスト:ファブリス・メルキオ
出演:ドニ・ラヴァン、アリン・ブラズ・ダ・シルヴァ、ダヴィッド・ルラ、ユンエ・キム、マリオン・レヴィ
関連サイトURL:http://www.institut.jp/ja/evenements/11475
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by kou-mikami | 2012-01-29 13:44 | パリ関連・その他
パリガイドブックの出版
いつもパリ写真ブログ「パリの物語」を御覧いただき、ありがとうございます。

今回は記事ではなく、
パリ関連の書籍出版のお知らせです。
韓国の出版社よりヨーロッパの旅行ガイドブック『トラベル-ロンドン・ミラノ・ベルリン・パリ』が出版されました。


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『トラベル-ロンドン・ミラノ・ベルリン・パリ』
(↑クリックで詳細ページへ飛びます)

ロンドン、ミラノ、ベルリン、パリの4都市が掲載されているガイドブックで、
観光地だけでなく最新流行のショップやファッションなどが紹介されています。
全ページカラーで豊富な写真付きなので、見るだけでも楽しめる作りになっています。

私はパリ編の写真部分を担当しています。
(本の詳細はこちら)

今後とも「パリの物語」をよろしくお願いします。

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     ガイドブック ページサンプル(1)

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     ガイドブック ページサンプル(2)

⇒その他のパリの写真はこちら
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by kou-mikami | 2011-01-08 14:26 | パリ関連・その他
イタリア映画祭2010
今回はフランス映画ではなく、イタリア映画の話です。
パリに関係がありませんが、ご了承を・・・。
なぜイタリア映画かと言うと、前の職場の先輩が都合が悪くなって観にいけなくなったため、
急遽僕がチケットを頂いて見ることになったのです。
行ってきたのは有楽町で開催中のイタリア映画祭2010
僕にとってイタリア映画は「ベニスに死す」であり「イル・ポスティーノ」であり、
最近のイタリア映画は全く知りません・・・。
最近は合作が多くて知らないうちにイタリア映画を見ている可能性もありますが、
純粋な(?)イタリア映画は本当に久し振り。
そのため、これは素晴らしい機会となりました。
しかし一日に2本もイタリア映画を見たのはきっと初めての経験でした・・・

まず最初に観たのが「重なりあう時」"La doppia ora"(写真)
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ポスターのビジュアルからして、なんだかサスペンスもしくはホラー要素が強そうだなぁというのが第一印象。
2009年ヴェネチア映画祭で主演女優賞を受賞したクセニア・ラパポルトが主演。
トリノのホテルで清掃係として働くソニアはスロベニア移民。
テープでイタリア語を勉強しながら、日々ベッドメイキングの仕事をこなしている。
オープニングはホテル客の自殺のシーンをソニアが目撃したところから始まります。
最初その女性客が主人公かと思ってみていたら、いきなり投身自殺を図ってしまい、
見ているほうも驚きでした。一体この映画どうなるんだ?
なにやら始まりから不穏な空気が映画全体に流れていました。

ある日ソニアは、「スピードお見合いパーティー」でグイドという男と知り合います
(イタリアにもこういうイベントがあるんですね。薄暗いシックなレストランで10分おきくらいに違う人と次々と話していくせわしないイベント)。
口数の少ないグイドは別荘のガードマンとして生活しています。
仲の良くなった2人は、グイドの勤務する大金持ちの別荘で時を過ごします。
しかしそこに突然強盗が入り、恐ろしい事故が起こります。
映画のストーリーラインからいきなり外れた感触があって、その意外な展開に驚きました。
徐々に内容はサスペンスの様相を呈していき、途中で主人公に意外な正体が判明します。

ラストは結局何かが解決したわけでもなく終わったような唐突さが残りました。
しかし観客を騙す監督の手腕は見事。
そして主人公の起こした過ちへの後悔が恐ろしい夢となって表出してくる中盤のシーンは
この映画の肝でしょう。原題は「2層の現在」という意味でしょうか。
夢と現在が映画の中で進行していくという意味での「2層」になっていて、
人間は決して一つの人生を生きているわけではないのだということを教えてくれます。
後悔や理想を引き摺りながら複雑に生きている。後からいろいろ考えていると、
この主人公の複雑な心理が映像の中にちりばめられていたことに気づきます。
映画祭だからこそ見れた映画でしたね。この映画はトリノが舞台でしたが、
トリノ舞台のイタリア映画といえば「トリノ、24時からの恋人たち」がありました。
こっちは若者の三角関係を描いた恋愛映画。

2本目は「まっさらな光のもとで」"Lo spazio bianco"(写真)
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フランスでいうカトリーヌ・ドヌーヴのような貫禄ある女優マルゲリータ・ブイが主演。
夜間中学の教師として働くマリアは離婚経験のある女性。
あるとき映画館で出会った男と関係を持ち、予期しない妊娠をしてしまいます。
相手が出産を望まないため、マリアは一人で産み育てることを決意します。
しかし早期出産のため未熟児として生まれた赤ん坊はなかなか呼吸器を外すことができず、
マリアは苛立ちと無力感の中で日々不安を募らせていきます。
病院の保育室のカーテンが全て白く、その映像のあまりの白さは人生のある「空白期間」を
象徴しているように見えました。子供が元気に育っていくかまだ分からない。
そんな母親誰もが抱える先の見えない不安な気持ちがこの白い光の中にあったような気がしました。
ちょっと怖くなるほどの白さです。

主人公は保育器の前で、待つことを学びます。
そして自分の自由を奪った生命と向き合いながら自分自身も成長していきます。
こちらはハッピーエンドで終わるストレートな映画でした。
親子をテーマにした映画は無数にありますが、
出産直後の母の不安を描く映画は意外と少ないと思います。
とても新鮮な映画でした。

どちらもストーリーが伏線がありそうで消えたりと不思議な感じでしたが、
これがイタリア映画なのかなと勝手に思いました。
2本とも女性が主人公だったのが印象的でした。
特に違和感もなく世界に入っていけたのは自分が最近まで女性を主人公にした小説を
書いていたせいかもしれません。

「重なりあう時」"La doppia ora"(2009/イタリア)
監督:ジュゼッペ・カポトンディ

「まっさらな光のもとで」"Lo spazio bianco"(2009/イタリア)
監督:フランチェスカ・コメンチーニ
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by kou-mikami | 2010-05-03 19:27 | パリ関連・その他
カトリーヌ・ドヌーヴと女性の自由
昨日、カトリーヌ・ドヌーヴ主演の新作「隠された日記」が
プレミア上映されたので観てきました。

友人がチケットを取ってくれたので観にいけたんですが、
なんとカトリーヌ・ドヌーヴがこの映画のために来日していました。

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    上映会のチラシ


「国際女性の日」に合わせたイベントでの上映だったのですが、
意外に男性のお客さんも多かったです。
きっとドヌーヴファンでしょうね。

初めて見るドヌーヴはなんだか迫力ありました!
そして受け答えがとても冷静(当たり前か?)。
女性の自由の問題について、熱くならず少し醒めた目線で意見を言うような感じで、
大女優の貫禄を感じました。

さて、映画のストーリーを少し。
カナダで暮らす娘が、フランスの田舎で医院を営む母のところへ戻る場面から始まります。
しかし次第に母と娘の間には深い亀裂が生じていることが分かってきます。
娘は医院の隣にある祖母の家を掃除して滞在するようになりますが
(この発想がフランス的ですね)、
あるとき祖母の昔の日記を見つけ、祖母の生き方に共感を得るようになります。
しかし50年前に家庭を捨てて出ていった祖母のことを母はまだ許しておらず、
その話題を娘がすることにひどく腹を立てます。
そうやって物語は気まずい空気のまま進んでいきますが、
最後に新たな事実が浮かび上がってきます。

娘を演じたマリナ・ハンズ(初めて知った女優さん)が素晴らしい!
フランス人女優は皆そうなんですが、とても自然体の演技で娘を演じています。
母親役はもちろんカトリーヌ・ドヌーヴ。
そして祖母(亡霊として出てくるアイディアは秀逸!)はマリ=ジョゼ・クローズ。

あとから気づいたんですが、原題のタイトルが深い。"Meres et Filles"、
つまり「母たちと娘たち」という複数形になっているところが、
映画の深いテーマ性を表しているように思えます。
この映画には2つの異なる生き方をした母が出てきて、
2つの異なる生き方をした娘たちが出てくる。
そして、母であると同時に娘であるのは、三世代の真ん中にいるカトリーヌ・ドヌーヴなんですね。
家庭を捨てた母親の娘として、そしてフランスを離れてカナダで生きる娘の母親として、
彼女は2人の生き方に怒りとまどいながら日々を生きていることが分かってきます。
やっぱりすごいです、フランス映画。

自分にはよく分からない問題というのが正直なところですけど、
こういう世代間の違いと言うのはフランスでもあるんですね。
とにかく、娘の生き方がとても現代的なところが今風のフランス映画だと思います。

僕が言うことじゃないかもしれないですけど、
女性の人たちに是非見てほしい素晴らしい映画ですね。

ドヌーヴが次来日するのはいつになるんだろうか・・・

「隠された日記」"Meres et filles"(2009)
監督:ジュリー・ロペス=クルヴァル
主演:カトリーヌ・ドヌーヴ、マリナ・ハンズ、マリ=ジョゼ・クローズ

その他のパリの写真
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by kou-mikami | 2010-03-02 00:03 | パリ関連・その他
フランス大使館の破壊と創造
今回はパリの物語ではなく、
東京麻布にあるフランス大使館のお話です。

フランス大使館は渡仏の際にビザを申請に行った所。
そのとき勤めていた会社を休んで行ったことを思い出します。
自分の人生にとって一つの象徴的通過点でした。

その大使館が取り壊されるというニュースを知ったのは去年の暮れ。
そして壊される前に、旧大使館が一般公開されるというので行って来ました。
中は「No Man's Land」というアートイベントが開催され、
大使館の建物が世界中のアーティストによって自由にデコレートされていました。

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大使館です。すでに外壁がグラフィティでペイントされています。
なんだかパリのスクワット(芸術家不法占拠)を思い出します。

大使館への入場は無料。
中に入ると、もはや大使館とは思えない異様なアート空間になっていました。

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入口では赤白の力士がお出迎え。

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駐車場に停められたプジョーがこんな姿に!

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中庭の木までが、赤い縄でがんじがらめに・・これもアートです。

外だけではありません。
大使館の各部屋では異なるアーティストが独自の作品を展示していました。
これがまたすごい。意味が分からないものが多い。しかしその空間にいると
不思議と落ち着いたり、こういう思考と持つ人がいるんだと感心した。

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大使館の室内

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無数の羊の群れ

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破片となった白い皿

各部屋を巡りながら普段は見れないアート作品を見ていきます。屋上にまでアートが!
部屋の窓からは、大使館から見た麻布の街が眺められます。

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階段の窓から街を眺める。

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階段もアートで装飾されています。

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中にはこんな真っ赤な部屋も!

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ガラスケースに収まった不思議な植物作品

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見覚えがあるなと思ったら、ここはかつてのビザ発券窓口。
渡仏する前に来たことを思い出しました。
今ではもう取り壊しを待つ中、束の間のアートで飾られていました。

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おそらくオフィス。全て銀色に塗られてしまってます・・銀好きにはたまらない(?)

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なんとオフィス用品が売りに出されていました。
実際に大使館で使われていたものです。
今ではレトロになりつつあるロッカー。
"MISSIONS"って、なんかいいですね~。

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庭に飾られた作品。透明の家が半分沈没しています。
右にあるのは羽が浮遊する透明の筒。

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フランス大使館の庭はなかなか広い。森の中に光る玉を思わせる作品。

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名残惜しみつつも、大使館から去る。

展示は1月31日まで。
フランス大使館「No Man's Land」
最寄り駅:日比谷線広尾駅
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by kou-mikami | 2010-01-23 17:51 | パリ関連・その他
エリック・ロメール監督死去
エリック・ロメール監督が11日にパリで亡くなりました。
いつか来ることとは分かっていましたが、非常に残念です。
元旦に「春のソナタ」を見直したばかりでした。もう89歳、大往生です。
抗うことのできない自然の力を感じます。

彼の映画を初めて観たのは、大学の授業のときでした。
ロメール映画を愛するフランス語の先生の授業で、映画脚本を訳すという講義内容でした。
最初は難しい映画だと思っていたのに、予習のために何度も見ているうちに
いつの間にかフランス映画の独特な間や美しさに共感するようになっていました。

それ以来、ロメール映画は私にとって人生を生きるための教科書そのものになりました。
一度お会いしたいと思っていましたが、もうそれも永遠に叶わなくなりました。
人生は一定の速度で確実に流れていることを最近実感します。
彼の映画の主人公たちのように、人生の一瞬一瞬を感じて生きていきたいです。
フランス映画を好きになったきっかけ、パリに行くきっかけとなったのは
全てロメール映画といっても過言ではありません。

ご冥福をお祈りします。
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by kou-mikami | 2010-01-16 14:06 | パリ関連・その他
2010年 新年のご挨拶
明けましておめでとうございます。
今年も「パリの物語」をよろしくお願いします。
2010年もパリに関する話題を、写真とともに載せていきたいと思っています。

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2010年が皆様にとって新しい人生の夜明けとなりますように。

2010年1月
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by kou-mikami | 2010-01-02 16:51 | パリ関連・その他
マリー・アントワネットの時計
今、銀座に「マリー・アントワネットの時計」が来ています。
前から気になっていたので、最終日に見に行ってきました。

マリー・アントワネットは、フランス国王16世の妃。
フランス革命でギロチンにかけられて処刑されたことは有名です。


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                 マリー・アントワネット(1755-1793)

贅沢の限りを尽くした彼女は無類の時計好きでもあり、
スイス出身の時計職人であるアブラアン-ルイ・ブレゲの熱烈なファンでした。
(当時、ブレゲの工房はパリのシテ島にあった)


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                 アブラアン-ルイ・ブレゲ(1747-1823)

王妃はブレゲが開発した最新式の複雑懐中時計を1782年に購入しています。
1783年には王妃の信奉者だった謎の人物が、ブレゲに時計を依頼しました。
それこそが、王妃のために注文された世界最高の時計「マリー・アントワネット」でした。

「当時のあらゆる時計の技術を凝らした最高の時計を王妃のために作ってくれ」
そう依頼されたブレゲは、ゴールドをふんだんに使ってその時計の制作にとりかかります。

しかし、マリー・アントワネットがその完成を見ることはありませんでした。
時計が完成したのは、なんと王妃が処刑されてから34年後のこと・・
その後、この超複雑懐中時計「マリー・アントワネット」は様々なコレクターの手に渡ったあと、
エルサレムの美術館に寄贈されましたが、1983年に盗難に遭って行方不明に。

今回銀座に来ているのは、
創業200年以上になるブレゲ社が、当時の資料を元に失われたオリジナルを復元した懐中時計です。


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           復元された超複雑懐中時計「マリー・アントワネット」

本当に美しいです・・。
時計は詳しくないですけど、その精密さと美しさに見とれてしまいますね。
でも間近で警備員がじっと見張っているので落ち着きません・・
(もうちょっと遠くから警備してくれればいいのに)

皮肉なことに、失われたオリジナルを忠実に復元したこの時計が完成したと同時に
24年間行方不明だったオリジナルが発見されたのです。
うーん・・なんだか闇で誰かが歴史を操っているような怖さを感じますねぇ。

*写真は全て展覧会パンフレットより

→その他のパリの写真
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by kou-mikami | 2009-05-31 21:55 | パリ関連・その他



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