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ハデウェイヒ
フランス映画祭4日目です。

この日に観た「ハデウェイヒ」は間違いなく今年最大の収穫でした。
謎めいたタイトルに惹かれて観に行ったんですが、
期待以上の映画!
良質な水のように揺らぎのないテーマと儀式的なストーリー展開に惹かれました。
タイトルは13世紀に実在したフランドル地方の神秘主義者の名前。映画の中ではそこまで出てきませんが。

ストーリーを少し・・
セリーヌはパリの裕福な親元から離れてフランドル地方にある修道院で生活をしています。
しかし信仰の異常な強さからか、規律を守らずに断食をしたり寒風の中に身を晒したりしたため、修道院から俗世へ戻るように指示されます。パリに戻ったセリーヌは、
サン・ルイ島にある豪華すぎるアパルトマンで無為な生活を送ります。
あるときカフェで出会ったアラブ人の青年と付き合い始めますが、キリストを愛するあまり、
肉体関係を持つことを拒否します。
しかしいくら祈ってもキリストは目の前に現れてくれません。
キリストの不在を嘆いた彼女は次第にイスラム教自体に感化されて危ない行動に出ます。
その後修道院に再び戻り、最後にある発見をします。

この映画の面白いのは現代ではなかなかお目にかかれない信仰心の強すぎるパリジェンヌが主人公だということ。
教会へ行く人の少なくなったパリでは意外な人物設定かも。
監督自身もこの主人公にはリアリティがないと断言していて、

「彼女は『愛するという感情の象徴』」

だと言っています(確かに彼女の透明な美しさは、人間自体というより何かをひたむきに愛する感情そのものに見える)。
彼女の顔のロングショットが多いのはそれを表現したかったかららしい。
しかしその愛はちょっと異常なものです。セリーヌはキリストを恋人のように愛していて、
そのために人間の男を愛することができません。
このような信仰心の深さを描くだけの物語だったら私は共感できませんでした。
しかし後半でイスラム教に感化されて大きな罪を背負い、その後再び修道院に戻ったとき、
ようやく監督の描きたかったことが分かる仕掛けになっています。
最初と最後に登場する修道院の壁を直す土木職人の男がセリーヌに変化をもたらすのです
(最初は彼が一体主人公とどんな関係があるのが不思議だったんですが・・・)。

監督は鬼才といわれるブリュノ・デュモン。
以前は哲学の教師だったらしく、映画にもその影響が現れています。
そして面白かったのは、トークショーで監督が「私はキリスト教などどうでもいい」と
答えていたことです。本当がどうか分かりませんが、
少なくともキリスト教の信仰者であったらならこの映画は絶対に作れなかったと思います。
ラストに待ち構える主人公セリーヌの感情の揺れこそ、
神を捨てた後に彼女がようやく見つけた最高のものなのだと思います。
とはいえ、映画の中で凱旋門があんな大惨事になるとは驚きました。
これは是非多くの人に見て欲しい傑作です!

「ハデウェイヒ」"HADEWIJCH"(2009/フランス)監督:ブリュノ・デュモン
主演:ジュリー・ソコロウブスキ、カール・サラフィディス
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by kou-mikami | 2010-03-22 16:47 | パリの映画
フランス映画祭2010開幕!
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今年もフランス映画祭がやってきました。
祭といっても最近はそんな雰囲気も徐々に減り、
唯一の目玉は初日のレッドカーペットくらい(横浜時代のベルエポックはいずこ?)。
本当に寂しい限りです。
それでも年に一度の最高のフランス的イベントであることに間違いはない。
規模が縮小するからこそ、参加して励ましたくなる映画祭なのでした。
チケットを予約してくれていた先輩は、
ちゃっかり数名の女優のサインをすでにレッドカーペットでもらっていたようです。
私は遅れてきたこともあって遠く微かにジェーン・バーキンの姿を見るのみで
そそくさとオープニング作品の上映される映画館内へ。

観たのは「ミックマック」(原題)という不思議なタイトルの映画。
「アメリ」や「ロングエンゲージメント」を撮ったジャン=ピエール・ジュネ監督の最新作です。
先に言ってしまうと、この映画は完璧なまでに面白い!
ここ数年に観た映画の中で文句なしに最高の一本でした。
痛快で笑えて、愛に溢れています。
彼の映画というと、アメリのように御伽噺的でノスタルジックな雰囲気(セピア色)漂う映画を
イメージします。
私は基本的に現実のパリをそのままに映す映画が好きなんですが、
彼の作品は何故だか見てしまう。計算しつくされた幻想的なパリは、
まさに映画でしか見られないパリなのです。
ジャン=ピエール・ジュネは映画を見る幸せを完璧な形で与えてくれる稀な監督の一人です。

さてストーリーを少し。
監督の描く物語は、いつも唐突でいてシリアス!
主人公はパリの小さなビデオショップで働く男バジル。
あるとき店の前で起こった銃撃戦に巻き込まれて銃弾が頭に入ってしまい、
その負傷が原因で仕事をクビになってしまいます。
職を失ったバジルは、路上生活をしながら大道芸人を始めます。
パリでホームレス生活を送る姿は、とてもリアルで微笑ましい
(セーヌ河岸の工事現場で眠る彼の横を遊覧船が通っていく)。
そんなときに廃品回収の老人と出会い、彼らの仲間になります。
廃品(鉄くず)の山で造った秘密基地のような愉快な家で、
変わった仲間たちと共同生活を始めます。
彼らは鉄くずなどの廃品を拾ってきては、ここで修理して生計を立てているのでした
(そういえばパリのリシャール・ルノーワル通りに鉄くず市というのがあったらしい)。

あるとき自分を負傷させた銃弾を製造している会社、そして幼い頃に父の命を奪った地雷の製造会社を偶然パリ市内で見かけます(この2つの兵器会社が通りを挟んで向かいに立っているところが、ありえないことを現実にしてしまうジュネ的な発想)。
そして、その会社に復讐をすることを決意。鉄くず小屋の仲間たちと一緒に戦いに挑みます。
この復讐の綿密さには笑ってしまう。廃品回収している彼らならではの小道具をフル活用して、抱腹絶倒の復讐計画が画面に繰り広げられます。
この復讐計画こそが、今回のジュネ監督のアイディアが満載につまったおもちゃ箱です。
そしてバジルたちが悪徳企業に仕掛ける最後の罠には、
見ているこちらも騙されるほどの徹底ぶり!

今回は久し振りにジュネ・ワールドに浸れました!
彼の映画の好きなところは社会に適応できない人たちをヒーローにするところ。
そして細部までこだわった映像もそうですけど、
前半はシリアルで現実的な状況に主人公が置かれるの対して、
そこから急に半分ファンタジーのような世界に入って主人公たちを幸せにしていくこと。
これはディズニーランドにちょっと似ている。
原題の「ミックマック」とは「たくらみ、陰謀」のこと。
「アメリ」では主人公がパリの人を幸せにするために幸福の陰謀をこしらえたが、
今回の映画の主人公は巨大な2つの悪徳企業に対して、不幸の陰謀をしていく。
悪い人間をやっつけるという安易な筋書きは痛快で面白い。

映画上映後のトークショーでは、アメリのカフェ(Cafe des 2 Moulins)に
監督自身もよく行くと言う話に。カフェにいると日本女性がたくさん来ると言っていました。
しかし誰も自分が監督だということに気づいてくれず、
店内にあるアメリのポスターを撮りたいからどいてくれと言われたらしい。
日本女性のかた、心当たりのある方はいますでしょうか??
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by kou-mikami | 2010-03-20 11:46 | パリの映画
我が至上の愛-アストレとセラドン-
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ついに念願の「我が至上の愛」をスクリーンで観ました。
以前東京で上映していたときは、観ることができず悔しい思いをしていたのですが、
今回ロメールの追悼上映で観ることになりました。
まさかロメールの逝去の後にスクリーン鑑賞が実現するとは、皮肉。

とはいえ、楽しみにしていた作品を見れるので心も高ぶる。
すでに観た映画好きの先輩によれば、「ラストがなんじゃこりゃ?」
という感じだと聞いていたので、天邪鬼な私は余計に楽しみになっていたのでした。

いざ見ると、これはすごい。
フランスがまだガリア地方だった5世紀が舞台。
とある牧歌的な村落に住む羊飼いの男女の純愛が描かれる。
なにもかもがまさに御伽噺的で、まったくつじつまが合わないことばかり。
男(セラドン)は浮気の疑いを女(アストレ)にかけられて、
すぐに川に飛び込んで自殺してしまう(しかもいきなりだ)。
しかし運良く美女3人の精霊に助けられ彼女たちの住む城で生活する。
途中で独占欲の強い精霊から逃げ出し、
2度とアストレの前に現れない誓いを立てて一人で山暮らしを始める。

これだけ書くだけでも、なんだか突拍子もない話だが、
この時代にはあったかもしれないと思わせるのは
画面に映る自然の美しさのせいかもしれない。
どれもこれも絵画的な情景でまいってしまう。特に精霊の官能的な美しさはすごい。
いかにも演劇的な衣装を身にまといっているんだけれど、
あんな精霊に出会えるなら川に飛び込んで自殺してもいいかなと思ってしまう・・・。
物語の後半はさらに突拍子もないことになっていく。
山暮らしをしながらもどうしてもアストレに会いたいセラドンは、
城の催しに修道士の娘として女装して彼女の前に現れる。
そこから先はもう笑いとエロティックのすごい世界だ。

ロメールだってきっと含み笑いしながら撮っていたに違いない(推測ですけどね)。
しかしすごいのは、この物語が忠誠的な至上の愛とは何かをあまりに真剣に教えてくれるところ。
ちょっとおかしくて、変でつっこみをいれたくなるようなストーリー展開も、
よくよく考えてみればロメールが人生を通して伝えたかった愛を語るため。
自然が美しくて、女性が可愛くてエロティックで、そして最後に教訓を残す。
フランス映画の極みはやはりロメールにある。今まで本当にありがとう。
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by kou-mikami | 2010-03-15 21:51 | パリの映画
カトリーヌ・ドヌーヴと女性の自由
昨日、カトリーヌ・ドヌーヴ主演の新作「隠された日記」が
プレミア上映されたので観てきました。

友人がチケットを取ってくれたので観にいけたんですが、
なんとカトリーヌ・ドヌーヴがこの映画のために来日していました。

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    上映会のチラシ


「国際女性の日」に合わせたイベントでの上映だったのですが、
意外に男性のお客さんも多かったです。
きっとドヌーヴファンでしょうね。

初めて見るドヌーヴはなんだか迫力ありました!
そして受け答えがとても冷静(当たり前か?)。
女性の自由の問題について、熱くならず少し醒めた目線で意見を言うような感じで、
大女優の貫禄を感じました。

さて、映画のストーリーを少し。
カナダで暮らす娘が、フランスの田舎で医院を営む母のところへ戻る場面から始まります。
しかし次第に母と娘の間には深い亀裂が生じていることが分かってきます。
娘は医院の隣にある祖母の家を掃除して滞在するようになりますが
(この発想がフランス的ですね)、
あるとき祖母の昔の日記を見つけ、祖母の生き方に共感を得るようになります。
しかし50年前に家庭を捨てて出ていった祖母のことを母はまだ許しておらず、
その話題を娘がすることにひどく腹を立てます。
そうやって物語は気まずい空気のまま進んでいきますが、
最後に新たな事実が浮かび上がってきます。

娘を演じたマリナ・ハンズ(初めて知った女優さん)が素晴らしい!
フランス人女優は皆そうなんですが、とても自然体の演技で娘を演じています。
母親役はもちろんカトリーヌ・ドヌーヴ。
そして祖母(亡霊として出てくるアイディアは秀逸!)はマリ=ジョゼ・クローズ。

あとから気づいたんですが、原題のタイトルが深い。"Meres et Filles"、
つまり「母たちと娘たち」という複数形になっているところが、
映画の深いテーマ性を表しているように思えます。
この映画には2つの異なる生き方をした母が出てきて、
2つの異なる生き方をした娘たちが出てくる。
そして、母であると同時に娘であるのは、三世代の真ん中にいるカトリーヌ・ドヌーヴなんですね。
家庭を捨てた母親の娘として、そしてフランスを離れてカナダで生きる娘の母親として、
彼女は2人の生き方に怒りとまどいながら日々を生きていることが分かってきます。
やっぱりすごいです、フランス映画。

自分にはよく分からない問題というのが正直なところですけど、
こういう世代間の違いと言うのはフランスでもあるんですね。
とにかく、娘の生き方がとても現代的なところが今風のフランス映画だと思います。

僕が言うことじゃないかもしれないですけど、
女性の人たちに是非見てほしい素晴らしい映画ですね。

ドヌーヴが次来日するのはいつになるんだろうか・・・

「隠された日記」"Meres et filles"(2009)
監督:ジュリー・ロペス=クルヴァル
主演:カトリーヌ・ドヌーヴ、マリナ・ハンズ、マリ=ジョゼ・クローズ

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by kou-mikami | 2010-03-02 00:03 | パリ関連・その他



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