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少女の思春期をリアルに描いたフランス映画『水の中のつぼみ』
ずっと気になっていたフランス映画『水の中のつぼみ』をようやく鑑賞しました。
制作当時27歳だった女性新人監督セリーヌ・シアマのデビュー作。
パリ郊外に住む少女の憧れや初恋を描いた作品です。
出てくる3人の少女一人一人の個性がリアリティをもって描かれ、
特に純粋で真剣で露悪的なところが、少女という存在の普遍的な特徴を捉えていました。
思春期の少女たちの変化と残酷さを見せてくれる美しくユニークな映画です。

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【ストーリー】
舞台はパリ郊外。
15歳の少女マリーは、小太りで冴えない親友アンヌといつも一緒だった。
あるときシンクロナイズド・スイミング教室の競技大会にアンヌを応援しに行くが、
そこで他のチームにいた魅力的な年上の女性フロリアーヌに目を奪われてしまう。
大会後、彼女へ近づきたくてシンクロ教室に入ることを決めるマリーだったが、
フロリアーヌはそんなマリーを煙たがり、冷たくあしらって相手にしない。
しかし親元を離れない子犬のように自分を慕い続けるマリーを見ながら
フロリアーヌは徐々に彼女に対して心を開いていく。
年上の女性と行動を共にすることで新しい世界を知っていくマリーだったが、
フロリアーヌのよくないある噂を耳にして当惑する。
そして今まで仲のよかった親友アンヌとも次第に距離を置いていく。


【憧れは自分を見失うこと】
ほとんど少女だけしか登場しない狭い世界の物語ですが、
これは誰もが経験する「新しい世界への憧れ」を描いた作品。
小学校から中学校の初めまで、子どもは穏やかで小さな世界に属しています。
しかし、ある日その向こうに大きな世界があることに気が付きます。
この映画はその世界を発見した瞬間から始まります。
オープニングの音楽のない水中映像は、少女が観た新しい世界そのもの。
そんな憧れの眼差しがカメラを通して観客にも直接伝わってきます。
主人公マリーにとっては、シンクロの大会で見かけたフロリアーヌの姿こそが
今までにない「新しい世界」だったのです。

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しかし、それは一方で今までの「古い世界」の消滅も意味します。
今まで親友だったアンヌ(古い世界)に急に嫌悪感を持って距離を置くようになり、
その代わりとして憧れのフロリアーヌ(新しい世界)に近づきます。
しかし、それは生まれて初めての経験であり、親しんだ世界ではありません。
新旧2つの世界の間でとまどう矛盾ばかりの自分の存在に苦しむことになります。
憧れによって自分を見失い、今までいた世界を嫌悪し捨て去っていく。
ここまで思春期の誕生を克明に描いた映画はないかもしれません。


【もう一人の主人公アンヌ】
主人公はマリーですが、
映画はマリーの親友アンヌの視点も追っていきます。
マリーがフロリアーヌに憧れをもったのと同じ日に
アンヌも一人の男性フランソワにプールの更衣室でばったり出会って恋をします。
偶然にもマリーとアンヌは同じ日に、新しい世界を見つけるのです。
しかしアンヌは自分の容姿にコンプレックスを持ち、自信を持つことができません。
それでもなんとかしてフランソワの気を惹かせたいというしたたかな思いが
リアリティのある不器用な行動を持って描かれています。

その日以降、二人は同じ空間にいながらも、別の世界に目を向けるようになります。
今までどおり日常生活は続いているのに身近な相手に関心を持たなくなる残酷さや
思春期独特のすれ違いや苛立ちが、とてもリアルに描かれています。


【映画とは思えないリアルな演技】
登場する3人の少女役の女優はどれも個性的な素晴らしい演技をしています。
主人公マリー役のポーリーヌ・アキュアールは、一途な少女をどこまでも純粋に演じます。
特に未知の世界を見つけた彼女の、自己を失うほどの真剣な瞳は一見に値するほど魅力的です。
マリーの親友アンヌ役のルイーズ・ブラシェールはコンプレックスだらけの
どこにでもいる少女を、どこまでもリアルに演じています。
マリーが憧れるフロリアーヌ役のアデル・エネルは
大人びた演技で、子どもと大人の間で揺れる繊細な少女を演じています。

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【この映画のもう一つの舞台、水】
またこの映画は水を舞台にした映画と言えるかもしれません。
邦題『水の中のつぼみ』が意味するように、彼女たちは常に水の中にいるのでしょう。
身近にありながら普段は気にも留めず、それでいて常に変化する透明な液体。
オープニングは水中でのシンクロのシーンから始まり、ラストも水の映像で終わります。
水に入ることによって新しい世界に出会い、その水におぼれて自分を見失い、
そして最後にはその水の中に安息地を見出していく。
全ての少女が通る不安定な時期を、水を利用することによってうまく映像化した映画です。


【原題Naissance des Pieuvresの意味】
『水の中のつぼみ』の原題は"Naissance des Pieuvres"(タコの誕生)。
タコにはフランス語で「厄介な存在」という意味があるようです。
少女の思春期という「美しいけれど不安定で厄介な存在」が生まれる瞬間を描いた映画と言えるかもしれません。
フランス少女の初恋や憧れが女性監督の目線で描かれています。
『水の中のつぼみ』は珍しく邦題が素晴らしい映画です。
原題そのままの『タコの誕生』では日本人には意味が分かりにくいし、
プールで生まれる少女の初恋や憧れをうまく表しているタイトルです。

幻想が失われたとき、二人は成長します。
最終的に憧れを捨てることで、少女は大人になっていく、
何故なら憧れを持ったり他人の教えを受けている間はまだ自分というものはない。
それを乗り越えて初めて、自分が生まれるのだと思います。
この映画はそんな「誕生」の映画であるのかもしれません。

『水の中のつぼみ』("Naissance des Pieuvres" 2007)
監督:セリーヌ・シアマ(Celine Sciamma)
出演:ポーリーヌ・アキュアール、ルイーズ・ブラシェール、アデル・エネル
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by kou-mikami | 2013-09-07 09:34 | パリの映画
フランス人は読書してる?パリの読書事情
9月になり、少しずつ秋へ向けて涼しくなってきています。
秋と言えば「読書の秋」ですね。
フランス人はよく本を読んでいるイメージがあります。
バカンス中やピクニック中に日差しの中で寝転びながら読むというスタイルは、
まさに欧米人の休暇といった感じです。フランス映画にも読書するシーンが多いです。
また議論の好きなフランス人は言葉への執着が強いのも事実。多くの優れた作家を出し、
一般の人たちも文学への教養が高いような気がします。
特にパリには出版社や書店が集まる知的な地区も存在します。
しかし実際にフランス人はどれくらい本を読んでいるのでしょう。

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【読書時間は1週間で6.9時間】

パリの読書事情を見てみましょう。
東京と同じで時間に追われがちなパリ。通勤途中のメトロの中で読む人が多いそうです。
他には夜寝る前に読む人も多いようですね。
ベッドの上で上半身裸のまま本を読む姿は、フランス映画でもよく見られる光景です。
フランソワ・トリュフォーの映画『家庭』のように、夫婦がベッドでそれぞれ違う本を読みながらその本の感想を言い合う場面もあるのかもしれません(理想の夫婦像です)。
1週間辺りの読書時間は6.9時間で、1日1時間は読書の時間に費やしていることになりますね(2005年NOP World Culture Score発表)。
生活の中に読書の時間があるのはやはり豊かな文化国といった感じがします。
いくら生活水準が上がっても本を読む時間さえなければ、それは文化国とは言えないのかもしれません。
フランス語以外の本では英語の次に日本語の本が多いというのも、日本人にとっては嬉しいですね。
おそらく村上春樹の小説や日本の漫画の影響もありそうです。


【やはり紙が好きなフランス人】

2009年のフィガロ紙の記事によれば、電子書籍などの画面で読むよりは紙をめくって楽しみたいという人が多いようです。
映画や音楽はダウンロードして電子端末で楽しみたいという人が40%いたのに対して、
本をダウンロードしたいという人はたったの5%。やはり紙としての本を重要視していることが分かります。
パリに昔ながらの装丁職人(リルユール)が存在するのもフランス人が本そのものにいかに愛着を持っている証拠だと思います。

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【ベストセラーだけに偏らない読書趣向】

日本ではベストセラーがたくさん売れてその他の本はあまり売れない状況ですが(俗にいう出版不況)、
フランスではベストセラーの売り上げは全体のわずか5%ほどで、
それ以外の本の売り上げが大部分を占めているとのことです。
これはフランス人がそれぞれの独自の好みの本を買っていて、
書店側も読者の希望に応えた多種多様な本をそろえていることを意味します。
一時の流行にとらわれない真の読書家が多いということかもしれません。
そのため書店のクオリティ(品ぞろえや陳列方法)も非常に高く、
かつお店それぞれに独自の味があります。
日本のようにどのお店に行っても同じ本が並んでいるということはありません。
パリの書店巡りは本好きにはたまらないパリ散策の一つです。


【一年間で1冊も本を読まない人が3割も】

しかし驚くべき結果もあります。2009年にラ・クロワ紙が18歳以上のフランス人を対象に行った調査によると、フランス人の30%は年間1冊も本を読んでいないという結果が出ました。
年間1~5冊読んでいる人は少し多い34%です。年間6~10冊読む人は13%と急に割合が少なくなります。
また逆に50冊以上読む人はフランス国民の3%いるという事実も見逃せません。
やはりフランス人の教養は読書によって作られているようですが、
サン・ジェルマン・デ・プレ周辺も出版社が減ってきたようで、
今後フランス人の読書人口が減っていくのではという危惧もあります。


【パリにあるワインが飲める読書バー】

読書離れが進んでいるかにみえるフランスですが、パリには読書に関する素敵なお店がたくさんあります。
その中のひとつLa Belle Hortense(ラ・ベル・オルテンス)はワインが飲める読書バー。
手前はバーになっていますが、奥に入るとプライベートな書斎スペースがあり、ワインを飲みながら好きな本を手に取って読むことができます。
ここの赤ワインはとても上質で、読書にもぴったり。
フランスのかわいい絵本やパリの写真集もあるので気軽に楽しむことができます。
知的なフランス人カップルがいることもあっていろいろ刺激を受けることも。
秋のパリに行かれる方は一度行ってみてはいかがでしょうか。

La Belle Hortense
住所:31 rue Vieille du Tempre, 75004 Paris
最寄メトロ:サン・ポール駅(St-Paul)

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本の祭典「サロン・ドゥ・リーヴル」

他にフランス人の読書好きを体験できるイベントとしてサロン・ドゥ・リーヴル(本のサロン)があります。
これは毎年様々な出版社が集まって本を紹介・販売する国際的な書籍見本市。
海外からの出展もあり、フランス人にとっては新たな国の本に出会えるチャンスでもあります。
人気のコーナーは作家のサイン会や講演会など。
毎年一つの国に焦点を当ててその国の文学を紹介するイベントもあり、
2012年は日本が招待国に選ばれました。開催期間は多くの本好きが集まり、
新しい本や作家と出会う機会となる世界的な読書イベントです。
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by kou-mikami | 2013-09-03 21:04 | パリの文化



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