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『美女と野獣』
映画『美女と野獣』を観てきた。
ディズニーアニメでも有名なフランスの童話『美女と野獣』の実写作品。
監督はフランス出身のクリストフ・ガンズ監督。
主演も今人気のフランス人女優レア・セドゥ。

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フランスでは1946年にジャン・コクトーによって映画化されているが
実に68年ぶりの本家フランスによる実写化ということで、期待も高い。
映像に関しては最高の出来といってよく、
現実と幻想が見事に調和した世界観が美しい。
物語は野獣の過去にも焦点を当て、過去の映画にはない独自の物語を描いたものの
肝心の美女と野獣の恋愛においては少し物足りなさを感じた。

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もともとはフランス生まれの民話
ディズニーアニメで世界的に有名な『美女と野獣』だが、
もともとは1740年フランスで出版された童話(民話)がオリジナル。
作者はヴィルヌーヴ夫人で、その後ボーモン夫人による短縮版が出版された。
裕福な商人の家に生まれた末娘ベルは、美しく誠実な女性。
ある日バラを盗んだ父の身代わりとして野獣のいる城に行き、
野獣との奇妙な生活を続けるうちに、野獣に愛情を抱く。
人間が異なる世界の種族と結婚するという異種婚姻譚であるが、
最終的に野獣は元の王子の姿に戻り、ベルとの幸せな結末を迎える。
いわば典型的なおとぎばなしの骨格を持った物語と言える。

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原作との違いは「野獣の過去」
今回の映画は、ヴィルヌーヴ夫人による原作を元にして
忠実に作られているそうだが、原作とは異なる部分がある。
それは「王子が野獣に変身させられた理由」を描いたところ。
どうして王子は野獣に姿を変えられたのかはかなり大事なところだが
何故か原作にもディズニーアニメにも描かれていない。
子供向けのおとぎ話なので、細かい部分は不必要だったのかもしれない。
しかし映画『美女と野獣』では、そんな王子の過去に焦点を当てている。
野獣の悲しい過去をベルが知ることにより、その野獣への愛情が芽生えるので
過去の描写はとても重要な要素であり、この映画が他の作品に比べて評価できる点。

ちなみに監督はジャン・コクトーの『美女と野獣』を敬愛しており
しかしながら今回はそのリメイクではなくオリジナルの物語にこだわった。
だが、愛情が芽生えたベルと野獣の恋愛が細かく描かれないまま
クライマックスへと流れてしまっている早急な印象を受けた。
その辺りをもう少し丁寧に描ければベルが野獣を愛した明確な理由を
視聴者に説得力を持って伝えることができたような気もする。

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野獣と出会うきっかけとなったベルの父
この映画のもう一つの特徴としては、ベルと家族の関係を丁寧に描いている点。
前半は主人公ベルとその家族の物語が続き、野獣との出会いまでのいきさつを
じっくりと描いている。
おとぎばなしとはいえ、主人公が幻想世界に入るきっかけにリアリティをもたせるのは
大事だと実感した。その辺りの構成はとてもフランス的な感じがする。
家族の中で重要な役割を果たすのは裕福な商人であるベルの父だ。
映画の前半はベルではなく父の視点で物語が進行していく。
いかにも裕福な商人という感じで、娘への深い愛情を感じさせる役柄。
彼が森で遭難し初めて野獣の城を訪れる場面は見事。
幻想的でありコミカルで、魔法のように現れたごちそうを頬張る姿が
人間世界と幻想世界を見事につないでいて素晴らしい。

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ベルの現代性
『美女と野獣』が18世紀の原作を元にしながら現代的なのは、
ベルが自分の意思で運命を切り開く強い女性として描かれているからかもしれない。
前半は父の身代わりとして野獣の城へ向かい、後半は野獣に会うために再び城へ向かう。
野獣を見て驚きはするも、好奇心が強く、野獣の城や庭を散歩する。
新しい世界への興味を持ってその場を切り抜けていく大胆さがうかがえる。

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シンデレラとの共通点
映画『美女と野獣』に出てくる3人姉妹は『シンデレラ』を思い出す。
わがままで強欲な2人の姉と純粋で無欲な末娘。さらに浪費家で遊び人の兄が加わる。
愚かな姉と兄の存在は、主人公ベルの誠実さや美しさを引き立たせ、
現実世界の不公平や理不尽を暗示しているように思える。

もう一人の主役、森の精
この映画の主人公はベルと野獣だが、
もうひとつ重要になってくるのは「森の精の存在」だ。
森の精は人間の驕りに対する自然の脅威として描かれ
野獣の過去や物語のクライマックスで重要な役割を果たしている。
森が開いて道ができたり、蔦が絡まり欲深い人間を殺したり。
巨大な石像が動き出す場面は、他の映画でも見たような気もするが、
自然界の神的な存在として描かれる森の精の迫力は
宮崎駿監督の作品にも通じるものがあるだろう。
少し違和感があったのは、森の精によって呪われた王子の飼い犬たち。
空想の生き物を描くことが好きなクリストフ・ガンズ監督ならではだが
妙にディズニー的なテイストの生き物で、今回の映画の世界観には
合わない気がした。

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個人的な希望を1つ言えるなら
呪われた城で一人でいたときの野獣の孤独を
描いてほしかった。そのような圧倒的な孤独より
野獣の悲劇性が高まり、視聴者の共感もさらに得られるのではないか。

300年前から語り継がれているおとぎばなしへの魅力は尽きないが
それを映像化することでより一層その物語への理解や疑問が出てくる。
今後も『美女と野獣』は様々な形で語られていくのだろう。

La Belle et la Bete(2014)
監督:クリストフ・ガンズ
主演:レア・セドゥ、ヴァンサン・カッセル
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by kou-mikami | 2014-11-14 09:24 | パリの映画



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